その瞳を愛してる
風呂を終えた百合子が寝室へ戻ると、夫である斯波に抱きすくめられた。
1週間に及ぶ出張を終え、斯波が今日、自宅へと帰ってきた。
帰ってくるとすぐに、斯波は百合子を抱く。
会えなかった時間を埋め合わせるかのように。
一男一女をもうけ、随分経つのに、百合子を飽くことなく求めてきた。
「もう、純一さん。びっくりするじゃない」
不満を紡いだ唇が、性急に奪われる。
口付けはあっという間に深いものになり、百合子は息を上げた。
「んっ……ふっ……苦しいわ……。少し待ってちょうだい……」
しかし斯波は百合子の身体を軽々と持ち上げると、寝台へと運んだ。
肌触りの良いシーツの上に、百合子の身体をやさしく横たえると覆いかぶさってきた。
「これ以上待てというのか?あなたは残酷な人だ。俺が、どれだけ我慢していたと思うんだ?」
「どれだけって、たかだか1週間じゃないの……」
「たかだか、ね……。あなたにとっては、”たかだか1週間”かもしれないが、俺にとっては”1週間も”だ。それに……」
浴衣の裾を割り、斯波の指が百合子の太ももを撫で上げる。
そうされると条件反射のように、百合子は足を開いてしまう。
憎まれ口を叩くくせに、身体は容易く、斯波の侵入を許してしまうのだ。
斯波の指先が、百合子の秘部に触れる。
そこはすでに充分な潤いを湛えており、くちゅりと濡れた音が部屋に響いた。
それがはっきりと分かり、斯波は喉を上下させて唾を飲んだ。
「あなたのここは、すでに俺を待ちわびている。違うか?」
「ふふっ……嫌な人ね……」
「お褒めに預かり光栄だ」
「褒めてなんかいないわ」
「あなたは、相変わらずだな。まあいい。すぐにそんな憎まれ口を叩けなくしてやる」
そう言うと斯波は、百合子の蜜壺に指を差し入れるとゆっくりとかき混ぜ始めた。
かき混ぜながらも、別の指ですでにぷっくりと膨らみ、触れられることを待ちわびている花芽をやさしく捏ねる。
百合子は、自分の中からどんどん蜜が溢れ出してくるのを感じながら、部屋の扉を見つめた。
そろそろだ……。
そう思った瞬間、寝室の部屋の扉が遠慮がちにノックされた。
百合子の身体を探っていた斯波の手が、ぴたりと止まる。
軽く舌打ちをしながら、扉を睨みつける斯波が言葉を発するより先に、百合子が言葉を発した。
「お入りなさい」
「百合子さん、あなたは何を言っているんだ?」
百合子の思わぬ言葉に、斯波は目を丸くしている。
夫婦の夜の営みの真っ最中に、部屋に使用人を呼び入れるとは……。
使用人たちは、気にしないようにしつけられているとは言え、さすがに気が引ける。
慌てて離れようとする斯波の首に百合子は腕を回すと、強引に抱き寄せた。
想定外のことに、斯波はあっさりと百合子の胸に顔を埋めるような体勢になってしまう。
「姫……奥様……ご所望のチョコレエトを、旦那様の分も合わせてお持ちいたしました」
ゆっくりと扉が開き、顔を出したのは百合子が斯波に嫁ぐにあたり野宮家から連れてきた執事の藤田だった。
寝台で横たわっている二人を見て、藤田ははっとした様子で息を詰めた。
動揺のあまり、手にしていた金属製の盆(トレイ)からカップやポットを落としそうになったのだが、寸でのところで食い止めた。
長年培った執事としての技術のたまものであろうか。
さすがとしか言いようが無い。
「待っていたわ、藤田。お入りなさい」
斯波を抱き締めたまま嫣然とした微笑を浮かべると、百合子は藤田を招いた。
藤田の紫色の瞳が、部屋へ入ることを躊躇して揺れる。
「いいからお入りなさい。持ってきてくれたのでしょう?」
「……失礼します」
斯波は百合子の胸に顔を埋めたまま、事の成り行きを見守っていた。
しばらく黙っていたが、百合子の胸の中でふっと笑みを零して身体を起こした。
これはすべて、百合子が謀ったことだと分かったからだ。
藤田は、夫である斯波公認の百合子の男妾である。
どんな思惑を持って、百合子はここに彼を呼んだのか。
結婚しても、相変わらずはねっかえりのお姫様に振り回される日々だが、斯波は今ではその状況を楽しめるようになりつつあった。
いったい、何を企んでいるのか。
「純一さん。藤田の淹れてくれる温かいチョコレエトは、とてもおいしいのよ。一緒に飲みましょう?」
「ほう、それは楽しみだ」
「藤田、私と純一さんの分を用意しなさい」
藤田にそう言いながらも、百合子は斯波のズボンのファスナーをゆっくりと下ろす。
そして、猛りきった男根を取り出すと、握りこんだ。
すぐそこに藤田がいるのに、お構い無しだ。
「くっ……」
そのまま男根を上下に扱くと、斯波は眉根を寄せて呻いた。
結婚してから数え切れないほど、夫である斯波とは身体を重ねている。
互いに、どこをどうすれば感じるのかは、もう知り尽くしている。
先端に滲み出てきた先走り液を亀頭に擦り付けると、粘着質な艶めかしい音がそこから湧き上がる。
「ふふっ……。強気なことを言った癖に、あなたの方が待てそうにない感じじゃない?」
「当たり前だろう。俺は1週間も我慢していたんだ。あなたを抱きたくて堪らないんだ」
「仕方のない人ね……」
濃厚な口づけを交わすと、百合子は藤田に視線を移した。
かわいそうな藤田は盆を手にしたまま、呆然と突っ立っている。
「藤田!」
百合子のとがった声に、藤田ははっと我に返る。
「早く用意しなさい。ぼんやり突っ立っていないで頂戴」
「……かしこまりました……」
震えた声でそう言うと、藤田は卓子の上に盆を置いてポットを手にした。
その姿を横目で見ながら、百合子は身体を起こすと斯波の上に跨った。
そして大胆にも、蜜があふれ出している花びらを斯波の顔前に晒し、自分の顔は勃起した斯波の男根の前に持っていく。
百合子は斯波の男根に手を添えると、赤い舌を突き出してちろちろと舐め始めた。
根元からゆっくりと筋に沿って舌を這わせ、つるりとした亀頭にねっとりとしゃぶりつく。
それを何度か繰り返すと、銜え込んだ。
そして、じゅぶじゅぶとわざと音を立てて、男根を口で扱いた。
斯波も負けじと音を立てて、百合子の秘部を舐め始める。
「んっ……ふっ……むぐっ……」
百合子は、斯波を愛撫しながらも声を上げた。
百合子の感じる部分を知り尽くしているから、斯波の巧みな舌遣いに、つい気をやってしまいそうになる。
それを何とかこらえながら、百合子はチョコレエトの用意をする藤田の様子を伺った。
異人の血が混じっているから、透き通るように白い藤田の肌。
その白い頬を真っ赤に染めて、必死に何かを堪えるようにして百合子に所望されたチョコレエトをカップに注いでいる。
ポットを持つ手は震え、カップに注ぎ口が当たりカタカタと音を立てた。
「はっ……あっ……だめ、純一さん……いっちゃうわ……」
抉るように舌先で中を探られ、快感のあまり百合子は腰を浮かせようとする。
その腰が逃げられないように、たくましい腕に捕まえられた。
快感に支配され、百合子は斯波の男根を銜えていられなくなり、愛撫する動きが止まってしまう。
「いけばいいさ。どうやら俺の勝ちのようだな。1週間も溜まっていたんだ、そろそろやばかったから良かった」
「ふっ……あ……あぁ……!」
一際高い声を上げて、百合子は絶頂に達した。
びくびくと震えた後で弛緩した百合子の身体を支えると、斯波は寝台の上に横たえさせた。
「さて、そろそろ俺を満足させてくれないか?百合子さんの中に、早く入りたい」
「いいわ……来て頂戴……」
「……で、だ……。藤田はどうするんだ?あんたのいくところを拝ませてやったんだ。もう充分だろう?」
斯波は冷えた視線を、藤田に向ける。
斯波の視線を受けて、赤くなっていた藤田の顔が、一気に青くなった。
「そうね……」
絶頂の余韻で乱れた息を吐きながら、百合子は藤田に目をやった。
青い顔の藤田が、呆然とした様子で百合子を見詰める。
「藤田。チョコレエトはいいわ。ここで、しなさい」
「……はい?」
退出するように命じられるのかと思っていた藤田は、百合子の言葉を理解できずに目を見開いた。
「だから、”ここでしなさい”と言ったのよ。お前の耳は飾りなの?」
「す……するとは、何を……」
藤田の青い顔が、今度は赤くなる。
赤くなったり青くなったりと、忙しいことだ。
これもすべて、百合子のせいなのだが。
百合子はゆるゆると腕を伸ばし、藤田の股間を指差した。
服の上から、しかも離れた場所からでも分かるくらい、そこは隆起している。
ズボンに押さえつけられて、窮屈そうにしている藤田の男根を思うと、百合子は自分がひどく昂ぶってくるのを感じた。
「興奮して、こんなにして……。お前のことだから、涼しい顔して部屋に戻って、今見たことを思い出しながら一人でするつもりなのでしょう?なんて、いやらしい。それなら、ここでしていきなさい。目の前で私の身体を見られるのよ。思い出しながらするより数万倍いいはずだわ」
「姫様……それは……」
これ以上赤くならないだろうと思われた藤田の顔は、真っ赤になった。
目は潤み、今にも泣いてしまいそうだ。
「百合子さん、それはあんまりじゃ……」
同じ男として、さすがに斯波も気の毒になったのか、藤田に助け舟を出そうとする。
しかし、百合子はぴしりと跳ね除けた。
「純一さん。あなたと結婚するとき、私が藤田をどう扱うかは、自由にして良いという約束だったはずよ」
「いや、確かに約束はしたが……」
「藤田は一人でするだけ。あなたは私を抱けるのよ。だから、いいじゃない」
そう言うと、百合子は起き上がり斯波の上に跨った。
硬度を保ったままの男根を握ると、蕩けそうに蜜を滴らせたところへと自身で導いていく。
ゆっくりと腰を下ろしながら、蜜壺が熱く固いもので満たされていくのを堪能した。
「あ……あん……」
斯波のものを中にすべて収めきると、百合子は喘ぎながら息を整えた。
そのままの姿勢で、藤田に目をやる。
「さあ、藤田。しなさい」
「……かしこまりました」
震える唇で藤田はそう言うと、その場に跪いた。
そして、ズボンのファスナーをゆっくりと下ろす。
静かな部屋に、その乾いた音が異様に響いた。
服の拘束を解かれ、猛りきった男根がぴんと反り返り隙間から姿を現す。
藤田のそこは、百合子が想像していた以上に固く勃起しており、すでにてかてかと濡れ光っていた。
それを自分の手で握りこむと、藤田は大きく息を吐いた。
「さすが混血児なだけある。大きいな……」
藤田のものを見て思わず呟いた斯波の口を塞ぐように、百合子は口づけた。
驚いている斯波の唇の隙間から舌を差し入れ、絡ませる。
斯波と百合子の粘膜が絡み合う音が、今度は響き渡る。
「あなたは余計なことは言わないで、私とのことに集中して頂戴」
「ふっ……む……まったく、あなたには適わないな……」
苦笑しながら、斯波は百合子の腰を掴むと突き上げ始めた。
その動きに合わせて、百合子も腰を動かし始める。
そして、藤田は自身を慰めるために手を動かし始めた。
「あ……あぁっ……。いいわ……」
「くっ……何度しても、あなたの中はよく締まる……。二人も子どもを産んだ身体とは思えない。堪らないな……」
「はっ……はっ……姫様、姫様……」
三者三様の声を上げ、快楽に身を投じる。
狂っている。
その自覚があるのにこんなことをしてしまうのだから、全員が狂っているとしか言いようが無い。
藤田が、自分を見ている。
斯波に犯され、乱れている自分を……。
興奮と哀しみが交じり合った、藤田の瞳。
その瞳を見ると、百合子は狂おしい気持ちに支配される。
藤田を愛することにより、狂ってしまった百合子。
百合子を愛することにより、狂ってしまった藤田。
そして、この状況で百合子を抱いている斯波もまた……。
百合子を中心として、みな、狂ってしまった。
夜を徹して、快楽の饗宴は続いていく。
◆
翌日、百合子が目覚めるとすでに日は高い所に昇り、寝台に斯波はいなかった。
もちろん、藤田もいない。
乱れるままに、昨夜は眠りについてしまったのだろう。
あれは、夢の中での出来事ではなかっただろうかとも思うのだが、身体の気だるさがそうではないことを雄弁に語っていた。
重たい身体を起こすと、乱れていた浴衣がきちんと整えられて着せられていることに気づく。
斯波が、そうしてくれたのだろう。
卓子の上に、小さな紙切れが一枚置かれていた。
『今日から10日ほど、商談で上海へ行ってくる。また電話をする。』
斯波からのものだった。
それに目を走らせると息を吐き、百合子は窓辺に歩いていきカーテンを開けた。
すると、その音を聞きつけていたかのように、部屋の扉がノックされる。
控えめなノック音に、それが誰であるのかはすぐに分かった。
「よろしいでしょうか?」
「いいわ。入って」
百合子の返事を聞くと扉が開き、藤田が入ってきた。
手には、ポットとカップを載せた盆を持っている。
「おはようございます、姫様。そろそろお目覚めになる頃かと思い、チョコレエトを用意してまいりました」
「……」
藤田は目を伏せたままそう言うと、盆を卓子の上に置いて、温かいチョコレエトをカップに注ぎ始めた。
チョコレエトの甘い香りが、情事の余韻が燻っている部屋の中を満たしていく。
「疲れているときには、甘いものがよろしゅうございます」
百合子を見ずに、カップを見つめたまま藤田はそう言った。
「藤田」
「はい、姫様。何でございましょう?」
百合子が呼んだのに、藤田はこちらに目を向けようとしない。
「藤田!こちらを向きなさい!」
百合子がヒステリックな声を上げることにより、ようやく藤田はこちらを向いた。
怯えるようなその瞳が瞬きを繰り返し、百合子を見つめる。
「斯波様に、姫様は疲れているだろうから起こさずにゆっくり休ませてやれと言われました。留守の間は頼むと……」
「純一さんが、そんなことを……?」
「はい」
斯波自身が公認した男妾とはいえ、藤田にそのようなことを命じていくとは……。
百合子のせいで、歪(いびつ)な主従関係が斯波と藤田の間にも、出来上がりつつあるようだ。
「それで、あなたは純一さんの言うとおりに、こうしてチョコレエトを持ってきたわけね」
棘のある百合子の言葉に、藤田はうろたえた。
「チョコレエトを持ってきたのは、斯波様に命じられたからではありません。私は、姫様に疲れを癒していただきたくて純粋に……」
「純粋に、ね……」
藤田の言葉を噛み砕くように、百合子は呟いた。
そうだ。
いつだって藤田は、百合子のことを純粋に思いやってくれている。
幼い頃からずっと……。
百合子が、斯波の妻になった今も変わらず……。
互いの思いを確かめ合ったというのに、斯波の妻となることを選んだ百合子。
藤田の愛を踏みにじり、心を傷つけてしまった。
そして、その傷を百合子は未だに抉り続けている。
すべて、藤田の瞳を見れば分かる。
どれだけ彼が傷つき……それでも百合子を愛さずにはいられないのかを。
藤田の美しい瞳が好きだ。
その美しさを、曇らせ、失いたくない。
それなのに、傷つけずにはいられない矛盾。
「姫様……」
ポットを置くと、藤田は感極まった様子で、百合子に近づいてくる。
そして、百合子を遠慮がちに抱き締めてきた。
藤田の腕の中に、百合子の小さな身体はすっぽりと収まってしまう。
「姫様のお乳をください。昨夜はとても我慢したのです」
「藤田……」
百合子は大仰にため息をつくと、抱き締めてくる藤田の身体を押しやった。
藤田の大きな身体は、あっさりと引き剥がされる。
「私、疲れているの。お前も分かっているでしょう?」
「……姫様!」
今にも泣き出しそうな、すがるような二つの瞳が百合子を見つめる。
百合子の我がままをなじる事も、たしなめる事もせず、藤田は悲しげな瞳を向けてくる。
ひと回り以上も体格差があるのだから、無理やりにすることも出来るだろうに、藤田は百合子がよしと言うまで、無体は働かない。
それが余計に、百合子を付け上がらせる。
百合子は、卓子の上に置かれたカップを手に取ると温かいチョコレエトを一口飲んだ。
疲れた身体にしみこんで行く甘さに、泣きたいような気持ちになった。
とても、甘い。
喉に絡み付いて離れないその甘さは、藤田のやさしさに似ている。
どうして、斯波の妻となったのか。
どうして、自分の思い通りにならないのか。
様々な思いが藤田を支配しているはずなのに、それを見せようとはせず、綺麗な紫色の瞳でただ百合子を見詰めるだけ。
心のうちを吐露して百合子を責め、叱ってくれれば、どんなに救われるのだろう。
――藤田。お前を愛しているの。
そうしてくれれば、素直にそう言えるかもしれないのに。
しかし、藤田は絶対にそうしない。
だから、百合子も藤田も救われない。
救われない代償のように、こうして百合子の乳を藤田はひたすらに求めてくる。
それが、虐げられ続けた藤田が百合子へと求める愛。
ありきたりな愛の言葉など、もう斯波の妻となった百合子からは得られぬであろう諦念が、藤田を執拗なまでに乳に固執させるのだろう。
百合子はカップを置くと、呟いた。
「仕方の無い子ね……。疲れているから、お乳だけよ」
「……っ姫様!!」
百合子がそう言うと、藤田は浴衣の合わせを開き、乳房にむしゃぶりついてきた。
おあずけを解除された、極度な飢餓状態の犬のようだ。
「あ……あはは……姫様の…姫様の……」
藤田がものすごい勢いで吸い付くと、乳房の奥がつんと痛み、乳が湧いてくるのを感じた。
そのじわじわと来る痛みに、百合子は眉を顰める。
「お……おいひいです……。おいしゅうございます……。姫様……」
「……んっ。もうちょっと落ち着きなさい……」
満足げに喉を鳴らして乳を飲みながら、藤田は言った。
「あっ……はぁ……。斯波様は、このおいしさをご存知ないのですよね?姫様の、お乳のおいしさを……。昨夜見ていて、分かりました……。あは、あはは……」
「そうね……。純一さんは、お乳にこだわりは無いようだし」
「ああ……、私だけのものです。姫様のお乳は、私だけの……。姫様、姫様ぁ」
そう言いながら見上げてくる藤田の瞳が、涙に濡れている。
百合子から分泌される乳で白く濡れてしまう頬の上を、透明な涙が伝っていく。
それは、歓喜の涙なのか、哀しみの涙なのか……。
百合子は、藤田に乳を吸わせながら上を仰ぎ見ると、恍惚の表情を浮かべてそっと彼の頭を抱き寄せた。
日本人のこしのある髪とは違い、癖のあるふわふわとした柔らかな髪。
絹糸のように、とても心地の良い肌触り。
白磁を思わせる透き通るような肌。
そして、紫色の瞳。
藤田は、美しい。
そして、紫色の瞳から溢れてくる涙は、もっと美しい。
これより美しいものを、百合子は知らない。
美しい藤田は、壊れてしまったのではない。
百合子が、壊してしまったのだ。
だから藤田は、もうどこへも行けない。
藤田を……その瞳を愛してる。
それが、とても歪なもので、世が認めてくれないものであったとしても、百合子は永遠に愛してる。
永遠の下僕EDを初めて見てしまったとき、とてつもないトラウマを植えつけられ、「これは無い!」と思ったのですが、ここに来て考えが変わってきました。
斯波を旦那にした上で藤田を飼い慣らす百合子様……。最強&最高、まじ伝説だと思います。
賛否両論の嵐(?)を巻き起こした藤田の特殊な性癖ですが、現実には百合子を独占しきれなかった藤田が、百合子を唯一独占できる手段だったのではないかと思ったりしています。